ボクノコト:役立たずで古いというだけで解体して更地にという思考への異議申し立て者

如何なる感性が



嘗て近所にあった旧家は屋根が天然スレートで葺かれているこの辺りでは非常に珍しい貴重な建築であった。

木造二階建てで磨きこまれたガラス窓は  ゆらゆらと周囲の風景を異化していた  ことに西陽が当たる時間帯が

美しく  夕陽がまるで溶けてゆくように歪みながら  虹色に分光された夕暮れの光を 反射させていたのだった。

これは、10年以上前のことなのである。 行政は50年以上前の前時代に計画された道路計画をそのまま 「実行」して

しまったのだった。 旧家は解体され  屋根の天然スレートは何処へと時々考えてみていた。

小さな地方の町のど真ん中を新しい道路に貫かれ  その道路脇の草むらを覗きこんだとき それはあった。

それは 息をのむ光景 これって誰か もしかしたら行政に携わっている誰か? が 下した結論だったわけなのだろう


天然スレートは、おそらく石巻市雄勝町産の雄勝石から造られたものに違いない あの神戸の異人館の屋根や壁を飾

っているそれだ。それらは一枚一枚薄く打ち割られて 無論 手作業で瓦の鱗の一片のような形に成形されて 出荷されたもの

100年以上は経過しているのではないだろうか  それらが この有り様なのである   一体このことは何を現しているだろうか

ちょっと 僕の想像を超えてしまっていて 混乱  これが人間の仕業だという訳か 

明日、拾いにゆくことにしよう


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